自動車の相続の手続き方法と名義変更をわかりやすく!相続しない場合まで

自動車の相続の手続き方法は?

身内の方が亡くなられると財産を相続する必要があります。
「自動車の相続に手続きなんて必要あるの?」と思われた方、実は自動車も相続の対象になるのです。これを知らないだけで損をしてしまうことがあります。相続と聞くと不動産や預貯金、保険金に目が行きますが、車に関しても立派な財産(動産)ですので、被相続人(お父さまやお母さま)が死亡した場合には相続税が課せられます。

そうなってくると、

「自動車の名義変更」

「自動車の相続に相続税はかかるのか」

「自動車の相続にはどのような手続きが必要になるのか」

など色々とやらなければならないことが出てくると思います。この記事ではどのような手順を踏んで「自動車の相続の手続き」を終わらせるのか、「相続をしたくない場合」はどうすれば良いのか、「相続した自動車を売る」にはどうしたら良いのかなどについてステップごとに分かりやすく説明していきます!すぐにでも相続した自動車を売却してしまいたい方はこちら

自動車に相続税はかかるの?

相続税法では、被相続人が死亡した日(相続開始日)の時価総額で課税額が変わってきます。自動車だと、主に3つの方法のうちどちらかを用いて評価されます。

自動車(一般動産)の価格は、原則として、「売買実例価額」、「精通者意見価格等」を参考に評価します。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、「減価償却」という方法により減額した価格で評価されます。

参考:国税庁の「財産評価」

この時、ほとんどの場合が「売買実例価額」で評価されます。売買実例価額というのは、オークションや中古ディーラーで取引されている価格が参考にされます。大体の価格を調べるには自動車の使用年数、種類、走行距離などを参考にしてみて似たようなものが参考価格になります。

自動車を相続する場合、死亡してからの期限はあるのか?

この場合の期限は2つあります。1つは自動車の名義変更までの期限、もう1つは相続税の確定申告までの期限です。自動車の名義変更までの期限はありません!ですが、相続税の確定申告までの期限は明確に定められています。相続税の確定申告の申告期限を過ぎてしまうと加算税延滞税がかかる場合があるのでご注意ください。

相続税の確定申告の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限日が土日祝日である場合は、その日の翌日が確定申告の申告期限となります。

参考:国税庁の「相続税の申告と納税」

相続した自動車の名義変更をする具体的な方法とステップ

では、具体的な方法とステップの解説に入ります。
まず、大まかに流れを書きますと、

「自動車の所有者確認」

「名義変更の手続き」

「相続人の選定」

「自動車相続の手続きの必要書類の確定」

「陸運局へ資料の提出」

この5ステップでお送りします。

1.自動車の所有者を確認する

最初に自動車検査証(車検証)にて確認を行いましょう。自分の父が使っていた車だとしても、父が所有者であるとは限らないので、毎回確認をするようにしてください。車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄に記載のある名前が所有者になります。もし、父の名前でなく会社の名前であれば、会社の契約更新にあたるので相続の手続きは必要ありません。車検証は手続きに必要な書類ですので、事前に準備をしておきましょう。

自動車の名義変更は必要か?しないとどうなる?

「別に名義を変更しなくても運転できるし、保険も付いてるから大丈夫じゃない?」と思う方もいると思います。ですが、自動車の名義を相続人(子どもなど)へ変更しておかないと、自動車の売却、自動車の解体処分等が行えなくなってしまいます。さらに、事故を起こした場合の損害額が保険の保険金額超える場合、それ以上の額が支払われない可能性も出てきます。思いもよらない損失を被ることになりかねません。簡単な作業ですのでそのままにせず名義変更をしましょう。

2.名義変更の手続きをする

自動車の名義変更は正式には「移転登録」と言います。自動車の名義変更には大きく分けて、3つのパターンがあります。「自分でやる」「専門家(司法書士など)に任せる」「自動車のディーラーに任せる」などがあります。下記の文章を読んで、「自分でやる」「自動車のディーラーに任せる」のどちらかを選んだ方は次のステップもご覧ください。

自分でやるか、専門家に任せるか

結論から言いますと、手間を取るかお金を取るかの違いです。任せるとしても量により値段が変わってくるので一概には言えませんが、5つのステップ全て(最初から最後まで)を約30万円で手続きを済ませてもらえる代理サービスもあります。

名義の変更だけであれば専門家に任せる必要のある人は、平日全く時間が取れない人のみで良いです。というのも、書類の提出を行う陸運局は平日の8時45分~16時(11時45~13時の時間帯を除く)の間に手続きを行う必要があるからです(所要時間は半日ほどです)。陸運局は各都道府県と北海道の主要都市にあります。

専門家(司法書士など)にお願いする場合は自動車の名義変更の書類作成に1~3万円が相場です。さらに、自ら集めるべき書類も集めてもらえるので、書類取り寄せ費用も別途かかってきます。自動車の名義変更は難しい作業ではないので、ご自分でやられた方がコスパが良いです。自動車のディーラーに任せる場合は、「陸運局への手続きの代行」(ステップ5の代行)ですので、ステップ3まではご自分でやって頂く必要があります。費用は1~3万円ほどかかります。

3.相続人の選定をする

新所有者が個人(1人だけ)の場合と複数の場合で異なります。現時点での自動車の名義人が亡くなられたからと言ってすぐに自動車の名義変更はできません。というのも、相続できる人(推定相続人)は何人かいる場合が普通です。この場合、亡くなられた方の財産は一旦、相続人たちの「共有財産」になります。この状態から個人の新所有者を決めるためには「遺産分割協議」を行う必要があります。自動車の相続を放棄する場合はこちら。

3.1.新所有者が個人の場合

遺産分割協議の末、自動車の持ち主が新たに1人決められた場合は、申請書を陸運局に提出する必要があります。申請書は手書きで必要事項を埋めていくものです。これは陸運局の窓口で配布されているので陸運局で記入する必要があります。国土交通省のホームページから申請書をダウンロードすることもできますが、通常のプリンターでは正式な申請書を印刷することができないので、現地で記入するようにしましょう!

申請書に添付すべき書類一覧

「亡くなられた方の除籍謄本」死亡証明のため

※「新所有者の戸籍謄本」亡くなられた方と同じ戸籍であれば必要ないです。

「新所有者の印鑑証明書」発行から3ヶ月以内で、自分の印鑑を各市町村の役場にて登録

※「委任状」新所有者が陸運局に行けない場合

※「遺産分割協議書」遺産分割協議があった場合のみ

「自動車検査証(車検証)」

「自動車税申告書」陸運局に隣接した税事務所で手続きができます。(当日で良いです)

※「車庫証明書」車庫の住所が変わらなければ必要ないです(同家族からの相続など)

「手数料納付書」陸運局の窓口にて申請可能です。(500円かかります)

※「ナンバープレート」管轄する陸運局が変わる場合のみ持参する必要有り

※が付いているものは場合によっては必要ないです。ついていないものはマストですので、準備しておくと良いです。

3.2.新所有者が複数の場合

自動車を複数人で所有するのはあまり良い方法とは言えません。というのも、いずれ売却や処分をする必要が出てくるので新所有者を1人に絞る方が得策です。中には複数人で所有しなければなくなったという方もいると思いますので、こちらも「新所有者が1人の場合(3.1)」と同様に必要書類があるので確認をしておきましょう。基本的には3.1と同じなので違いだけ記載します。

申請書に添付すべき書類で1人の場合と異なる部分

「遺産分割協議書」複数人で所有するのでこちらは必要ないです

※1「相続対象者全員の印鑑証明書」3.1と同じで3ヶ月以内のものが必要です

※2「相続する全員の委任状」

※1:15歳以下は住民票が別途必要になります。各市町村で印鑑証明書を発行するには16歳以上でなければできないからです。
※2:委任状には印鑑証明書と同じ実印での押印が必要です。未成年の場合は親の押印が必要です。

4.自動車の相続の手続きのための必要書類を確定させる

自動車の相続の手続きのための必要書類は個人、複数の方が相続する場合の2つに分けて3.1と3.2で説明しました。ここでは自動車の査定価格に応じて必要な書類が変わってくるので「自動車の査定金額が100万円を超える場合」「自動車の査定金額が100万円以下の場合」に分けて説明をしていきます。必要な書類を請求するのにお金がかかることもあるので、お近くの陸運局や役場にて確認しておくと良いです。

4.1.自動車の査定金額が100万円を超える場合

自動車の査定金額が100万円を超える場合の必要書類は3.1で述べたものと同じです。

4.2.自動車の査定金額が100万円以下の場合

自動車の査定金額が100以下の場合の必要書類は少し多くなります。ですが、相続をする方全員の押印、署名等が必要な遺産分割協議書の提出をしなくて良いのでその点は楽になるかと思います。原則は3.1と同様ですのでそれに追加されるものを記載します。

「遺産分割協議成立申立書」陸運局のホームページからダウンロードできます。

※「査定金額が100万円以下であることの証明書」業者に査定してもらう必要があります。

査定してもらう業者には注意

一般のディーラー・買取業者の査定は、資産価値を判断したときの法的効力がありません。間違って頼まないようにしましょう。査定士はどこにいるかと言いますと、こちらの看板がついている販売店にいるとの事です。

参考:日本自動車査定協会(JAAI)

安心の中古車買い取り

4.3.軽自動車の場合

軽自動車の場合は4.1,4.2の普通自動車の場合と比べて少し特殊です。普通自動車は陸運局へ手続きをしに行きますが、軽自動車の場合は軽自動車検査協会に手続きをしに行く必要があります。それに伴い必要な書類も異なってきます(呼び名が変わったりします)ので確認しましょう。

軽自動車の名義変更に必要な書類一覧

「自動車検査証(車検証)」普通自動車と同じく必要

「ナンバープレート」普通自動車と同じく管轄が変わるときのみ必要

「新所有者の住民票」普通自動車の場合は「戸籍謄本」でした

「申請依頼書」普通自動車の場合は「委任状」でした

「軽自動車税申告書」現地で記入できます

「自動車検査証記入申請書」現地で記入できます

5.陸運局へ資料の提出をする

ステップ1~4までお疲れ様でした。最後にステップ1~4で集めた書類を持って普通自動車の場合は陸運局に向かいます。必要な書類さえ持っていれば、窓口で手続き方法を教えてもらえるので安心してくださいね。印鑑は忘れやすいので忘れずに持って行って下さい。軽自動車の場合は、陸運局ではなく、軽自動車検査協会に手続きをしに行きましょう!陸運局は平日の8時45分~16時(11時45~13時の時間帯を除く)の間に手続きを行う必要がありますのであらかじめ時間の確認をしておいてください。所要時間は半日ほどです。

以前の所有者が持っていた自動車を自分で使用する以外にも「売却」「知り合いに譲渡」「廃車」にするなどの用途もあります。上記の3つ(売却、譲渡、廃車)を行う場合、自動車の相続の手続き(名義変更など)は必要ないと思われる方が多いですが、上記の3つを行うにしても名義変更などの相続の手続きは必要になってきます。自分の所有権になって初めて上記3つを行えるわけです。

自動車を第三者に譲渡するのはオススメできません

自動車を第三者に譲渡するのがオススメできない理由は、3.1で述べたような書類が相続した人と、新所有者の2つ必要だからです。その第三者が身内であれば良いですが、そうでない場合は2つの書類を集めなくてはならないので単純に労力が2倍かかります。さらに、新しい所有者の住んでいる地域の陸運局に出向く必要があるので大変な思いをすると思います。オススメは「売却」です。父が乗っていた自動車を子供の世代が使わない傾向にあるので売却する例がほとんどです。

自動車を売却したい場合

売却するためにも自動車の所有者の名義変更は必須です。それすらも面倒だという方もいると思います。買取の専門の業者では相続の手続きから廃車の手続きまでを一括でやってくれるところもありますので、売却、廃車について気になる方はこちらに問い合わせてみるのも良いのではないでしょうか?

まとめ

今回ご紹介した5つのステップを振り返りましょう。

①自動車の所有者の確認

②名義変更の手続き

③相続人の選定

④自動車の相続に必要な書類の確定

⑤陸運局へ資料の提出をする

いかがでしたでしょうか。自動車の相続の手続きに関して「大変」「難しい」と思っていた方もこのようなステップを踏んでいけば決して難しいものではないと思ったのではないでしょうか。最初は必要書類を集めたりするのに苦戦されるかもしれませんが、故人が残した大切な財産ですし、自動車の相続の手続きは一度慣れてしまえばとってもシンプルな作業です。何も知らずに手続きをするとなると大変ですが、今回ご紹介した5つのステップを踏んでいけばスムーズに自動車の相続の手続きが終わると思います。

参考文献:国土交通省 地方運輸局