成年後見人になるには資格が必要?費用、報酬、解約方法まで徹底解説

高齢化社会に突入している昨今、自分の親が急に認知症になり「介護の為に仕事を辞める」というのも珍しくない時代になってきました。親の預貯金を確認したいけれど親が認知症のため、キャッシュカードの暗証番号を忘れてしまい、お金を下ろすことができないといった状況に陥っているかもしれません。そんな時に有効なのが「成年後見人」という制度です。ただし、使い方によっては大損する場合があるので利用したいと思っている方は必見です。「成年後見人になりたい」という方のためにも分かりやすく解説していますので最後までご覧ください。

終活ドクター
この記事を読むと、
「成年後見人とは何なの?仕事内容は?」
「成年後見人になるにはどうしたらいいの?」
「成年後見人になるまでの流れを教えて!」
「成年後見人を利用する際の費用・もらえる報酬は?」
「成年後見人を利用して大損したケースってあるの?」
などの悩みや疑問を解決できますよ

成年後見人になるにはどうしたらいい?

この記事では、「成年後見人になるには」というテーマで分かりやすく解説していきます。この記事で説明していく流れとしましては、

この記事の流れ

・成年後見制度について知る

成年後見人になるにはどのようなステップを踏めばいいのかを知る

・成年後見人の費用と報酬について知る

・被後見人の3つのレベルで対処が変わってくるので、3つのレベルの分類分けを知る

・成年後見人の仕事内容について知る

・成年後見制度を利用して大損してしまったケースを確認する

終活ドクター
この記事の流れが分かったところで、知らない人も多い「成年後見制度」について分かりやすく説明をしていきますのでしっかりと理解していきましょう

成年後見制度とは

成年後見制度とは判断能力の不十分な人が、財産管理や相続で不利益を被らないように権利を保護する制度のことです。成年後見制度には2種類あって、

「法定後見制度」

「任意後見制度」

の2つです。成年後見制度を利用したときに財産管理や相続において代理人として手続きを行ってくれるのが「成年後見人」です。法定後見制度、任意後見制度にも同様に、「法定後見人」「任意後見人」が存在します。

法定後見制度とは

後見・保佐・補助の3種類に被後見人(認知症などで法的な手続きを行うことのできない人)の判断能力を分類します。それぞれ成年後見人・保佐人・補助人(配偶者、親族に限りません)家庭裁判所が選任します。後見開始の審判の申立権者は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、保佐人、補助人、その監督人、検察官などが対象です。成年後見人は、日用品の購入やその他の日常生活に関する行為を除き、成年被後見人が自ら行った法律行為を取り消すことができます。(専門用語が多いので解説しておきます)

用語説明

後見・保佐・補助
後見:判断能力を欠く常況のことです。ほとんど自分では判断できない状態です。
保佐:判断能力が著しく不十分な状態です。少しは自分でもできます。
補助:判断能力が不十分な状態です。おおよそのことは自分でもできます。
「明確な判断基準はないの?」という方はこちらに進んでください(この記事の下の方に飛びます)

・4親等内の親族
本人から見た時に、「両親」「祖父母」「子」「兄弟姉妹」「甥姪」「いとこ」「甥姪の子」にあたります。

審判の申立
これは成年後見人を付けるための請求のようなものです。基本的には親族が行います。なぜ申立権者の中に検察官が入っているのかと言いますと、親族がいない高齢の方もいるので、その場合検察官が申立をする場合があります。(検察官が申立をするケースは極めて稀なので気にしなくて大丈夫です)

参考:「名古屋家庭裁判所」

任意後見制度とは

本人の判断能力が十分なうちに任意後見人(任意後見受任者)を選任しておき、将来、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況にある方を保護・支援する制度です。要するに、法定後見制度は既に自分で判断できない方(認知症などで)が対象ですが、任意後見制度はもしもに備えて事前に申し込んでおくものです。任意後見人を選任したら公正証書で任意後見契約の締結が必要です。効力が生じるのは、本人や配偶者等の請求で家庭裁判所が任意後見人を監督する任意後見監督人を選任したときからです。

用語説明

公正証書
公証人(裁判官や検察官など)が作成する公文書のことで、一口に言ってしまえば書類です。任意後見人を選任した後は書類にて契約をしてください。ということです。

任意後見監督人
家庭裁判所が選ぶ人のことで、主に法律の専門家がなることが多いです。
任意後見人は被後見人(認知症などで判断能力が落ちてしまっている方)の親族であることが多いので、任意後見人の法律行為に対して補助が必要です。ゆえに任意後見監督人は、弁護士、司法書士、社会福祉士などの法律の専門家が選ばれます。

参考:「裁判所」

終活ドクター
成年後見制度について理解できたでしょうか?次は、
「親の成年後見人になるまでの流れ」
「第三者の成年後見人になるには資格等必要なのか?」
について分かりやすく説明しますので理解してスムーズに手続きを行えるようにしましょう!

法定後見人・任意後見人になるには

「法定後見人・任意後見人になりたい!」という方は2種類いると思います。1つ目は、「親の成年後見人になりたい」という場合。2つ目は、「仕事として第三者の成年後見人になりたい」という場合です。それぞれ場合分けしながら説明していきます。結論から言ってしまいますと、法定後見人も任意後見人もどちらも資格は必要ありません。しかも、「後見人は1人でなくてはならない」というルールもないので、複数人でも可能です。ここからは1つ目の「親の成年後見人になりたい」という場合について解説していきます。

法定後見人になるには

結論から言いますと、1つ目の「親の成年後見人になりたい」という方は基本的に、親の法定後見人になるのは難しいです。ここでは、2つ目の「第三者の成年後見人になりたい」という方が後見人になります。というのも、法定後見人は家庭裁判所が選任します。この場合、地元の「弁護士・司法書士・社会福祉士のような法律の専門家」が法定後見人になることが多いです。社会福祉士についてあまり深く知らない方もいると思いますので簡単に説明しておくと、日常生活に密接した法律や医学に精通した方のことです。これを機に「社会福祉士の資格を取ってみたい!」という方はオンラインで完結の資格スクールがあるので試してみるのも良いのではないでしょうか?

法定後見人が選任される(選ばれる)までの流れ

1.必要書類を集めて申立書を作成します

2.後見人の候補等を記した1の申立書を家庭裁判所に提出します(後見開始の申立)

3.家庭裁判所が申立書を調査して後見人を選任します(審判)

4.家庭裁判所が審判の結果を通知します(ここで後見人が決定します)

参考:「名古屋家庭裁判所」

法定後見人になるには後見人の候補の希望を申立書に記入し、必要書類を添付して家庭裁判所に提出します。その後、申立を受けた家庭裁判所は申立書を基に任意後見人を審判をして選出します。この時、必要に応じて精神鑑定を行うように通達が来る場合があります。
家庭裁判所が審判の結果を通知した段階で法定後見が開始されます。法定後見人として選出されるのはほとんどの場合、その地域の弁護士・司法書士・社会福祉士です。申立書を提出する際に法定後見人の希望を出すことはできますが、それが反映されることは稀です。また、後見人が決定し、後見が開始するまでに申立から1~2ヶ月ほどかかります。これはあくまでも目安で、精神鑑定などが必要ない場合です。状況によって少し変わってくるので参考程度にしておいてください。

正直に言ってしまいますと、生活保護などを受けている方(資産状況が良くない方)などは希望が通ることが多いです。というのも、このようなケースで法律の専門家達(弁護士、司法書士、社会福祉士)はやりたがりません。報酬がもらえない可能性があるからですね。この辺りについても後ほど詳しく解説しています。

「後見人は、被後見人の子である私がやりたい!」という気持ちもすごく分かりますが、手遅れ(既に認知症、痴呆症などを発症してしまって判断能力が乏しい場合)になってしまっては遅いです。そのために「任意後見制度」があるので、まだ自分はその状況に陥っていないという方は早く動き出した方が良いですね。

任意後見人になるには

法定後見制度は基本的に、法律の専門家達(弁護士・司法書士・社会福祉士)が法定後見人として選任されましたが、任意後見制度では法定後見人になれないような方(被後見人の親族や法律の専門家以外の方)が主に任意後見人になります。

語弊がないように言っておきますと、法定後見制度を使って親族が後見人になれなかったからといって任意後見制度を使うことはできません。冒頭でも述べていますが、任意後見制度は「事前の対応」なのに対して、法定後見制度は「事後の対応(認知症、痴呆症などにより判断能力が乏しくなった後)」ということを覚えておいてくださいね。それでは、任意後見人になるための流れを見て行きましょう。

任意後見人が選任される(選ばれる)までの流れ

1.被後見人と話し合い、後見人を選びます

2.公証役場にて公正証書を作成し、任意後見契約を締結します

3.被後見人の判断能力の低下が見られる

4.後見人が家庭裁判所にて後見の開始の申立をします

5.家庭裁判所が審判を行い、任意後見人を監督する任意後見監督人を選任します

6.後見が開始されます(効力が生じる)

任意後見人になるには被後見人の方と一緒に公証役場にて公正証書を作成する必要があります。すると、任意後見契約を締結することになるので、その時点で後見人の方は任意後見人として登記されます。公正証書の書き方が分からない方や、行く暇がない方もいると思いますので、その場合は弁護士等に相談することもできますが、難しい作業ではないですし、弁護士に頼むとかなり高額な値段を請求されますので、ご自分で手続きを完結されることをオススメします。

ここまで終われば手続きは落ち着きます。ここからは被後見人の方の判断能力が低下し次第、次のステップに移る必要があります。後見人の方か、被後見人の親族が家庭裁判所に対して申立をする必要があります。この場合、必要書類を郵送するか、家庭裁判所に持っていくことで完結します。この後家庭裁判所が審判を行い、任意後見監督人を選任して通知を行います。この段階で後見が開始されます(効力が生じます)。申立から後見が開始されるまで大体1ヶ月ほどかかります。

任意後見制度は法定後見制度と違って、後見する内容の自由度が高いです。手遅れになって法定後見制度を利用しないに越したことはないので(この後にある費用の面で)、もしもに備えて事前準備をしておきましょう。

終活ドクター
法定後見制度・任意後見制度を利用するにあたって条件や流れを確認できたでしょうか?効力が生じるまで申立からそれぞれ1~2ヶ月や2ヶ月ほどかかることも理解できたと思います。
次に、2つ目の「第三者の成年後見人になるにはどうすれば良いのか」について解説していきます。

第三者の成年後見人になるには

第三者の成年後見人になるには資格等は必要ありませんが、基本的に家庭裁判所から選任されるのは、「法律の専門家」である弁護士・司法書士・社会福祉士のいずれかであることが多いです。この3つの職種のうち、社会福祉士が第三者の成年後見人になる方法やなるためにかかる費用、期間等について解説していきます。(弁護士・司法書士は既に知っている可能性があるので)弁護士の方で成年後見人の登録方法が気になる方はこちらをご覧ください。

社会福祉士が成年後見人になるには

社会福祉士が成年後見人になるには5つのステップを踏む必要があります。詳しくは各都道府県の社会福祉会のホームページにて確認をしてみてくださいね。

社会福祉士が成年後見人になるまでの流れ

1.社会福祉士国家試験に合格し、日本社会福祉士会に入会

2.基礎課程の基礎研修Ⅰ,Ⅱ,Ⅲを受講する

3.成年後見人材育成研修を受講する

4.名簿登録研修を受講する

5.権利擁護センター「ぱあとなあ」に登録する

参考:「日本社会福祉会」,「神奈川県社会福祉会」

社会福祉国家試験に合格してから自分で日本社会福祉士会に入会する必要があります。入会方法はこちらの「日本社会福祉士会」のホームページからできます。入会の手順としては、

日本社会福祉士会の入会手順

各都道府県社会福祉士会にて入会手続きを行いますが、一部の都道府県社会福祉士会では、日本社会福祉士会にて入会手続きを代行しています。

  1. 入会申込書を請求する。
  2. 必要事項を記入し、添付書類と一緒に本会事務局または各都道府県社会福祉士会事務局へ
    送る。
  3. 都道府県社会福祉士会の会員として登録完了。
  4. 『生涯研修手帳』、『会員証』等がお手元に届く。
  5. 入会金・年会費が引落される。

引用元:「日本社会福祉士会」

 

入会後、各都道府県の社会福祉士会の規定に従い、「基礎研修」をⅠ~Ⅲまで3種類受講します。これらは並行して受講できないので、1年ごとに受講するようにしてくださいね。ですので、どれだけ早くても基礎研修を終えるまでに3年間は必要となります。その後、「成年後見人材育成研修」を受講します。この研修は4日間かかります。そこから名簿登録研修を受講するのですが、成年後見人材育成研修~名簿登録研修が終了するまで最短で1年間はかかります。どんなに早い方でも「成年後見人」として登録されるまで最低4年はかかります。

実際に成年後見人にならなくても、これらの研修を終えれば後見人関連の仕事もできるようになるので、時間と費用はかかりますが、取っておいて損はないです。成年後見人の仕事はそれほど美味しい仕事なのです。社会福祉士が成年後見人になるための手順と要する期間を理解したところで、成年後見人になるまでにかかる費用について解説していきます。

社会福祉士が成年後見人になるまでにかかる費用

社会福祉士登録:5,000円
年会費(初年度):19,000円(2年目以降は14,000円)

基礎研修Ⅰ:11,000円

基礎研修Ⅱ:33,000円

基礎研修Ⅲ:44,000円

成年後見人材育成研修(テキスト代):14,000円

成年後見人材育成研修(受講費):50,000円

合計:176,000円

終活ドクター
社会福祉士が成年後見人になるにはどのような手順を踏んでいけばよいか理解できたでしょうか。成年後見人になるには4年間と約176,000円がかかることも分かりましたね。大変ですが、その分メリットもあるので、取れるのであれば取得しましょう!
次に、
「成年後見制度を利用する際にかかる費用」
「第三者の成年後見人になった時の報酬はどのくらいなのか」
について解説していきます。

成年後見人の費用と報酬

「成年後見人っていくらかかるのか?」

「成年後見人になるといくらもらえるのか?」

これって気になりますよね。両者いると思いますので、この2つのケースを法定後見制度利用の場合と、任意後見制度利用の場合とで分けて、詳しく解説していきます。

法定後見制度利用時の費用・報酬

法定後見制度利用の場合は任意後見制度利用の場合と比べて一般的に費用は安いのが特徴です。それに対して、法定後見人になった場合、もらえる報酬は任意後見人になった場合と比べて報酬が高いのが特徴です。

法定後見制度利用時の費用

基本的には申立費用の1万円ほどのみです。ですが、精神鑑定を家庭裁判所から要請された場合は費用が一気に跳ね上がります。相場としては状況によりますが、5~10万円ほどかかります。被後見人が第三者(主に法律の専門家)の場合はこの費用とは別に月額3万円ほどが法定後見人の報酬としてかかってくので注意してくださいね。

法定後見人になった場合の報酬

法律の専門家が法定後見人になる場合と被後見人の親族が法定後見人になる場合によって報酬は変わってきますが、前述したように、法定後見人は法律の専門家がなる場合が多いので、その場合を説明しますと、平均月額報酬は3万円となっています。さらに深掘りをすると、被後見人の資産(管理財産)の度合いによっても報酬は変わってきます。管理財産が1000万円以上5000万円未満の場合は3~4万円で、管理財産が5000万円を超えると5~6万円となります。

「この報酬はどこからもらえるの?」と思う方がいると思いますが、それは「被後見人の財産」から捻出されます。正式な額は財産管理の貢献度合いなどによって変わってきますし、最終的には家庭裁判所が審判により決めるので、問い合わせてみてください。報酬受け取りの傾向としては、給与のように毎月振り込まれるような形ではなく、1年間分の報酬をもらう形に近いです。その額を月ベースに直すと月額の報酬が算出されます。

任意後見制度利用時の費用・報酬

任意後見制度利用の場合は法定後見制度利用の場合と比べて一般的に費用は高いのが特徴です。それに対して、任意後見人になった場合、もらえる報酬は任意後見人になった場合と比べて報酬が安いのが特徴です。

任意後見制度利用時の費用

任意後見契約に2~3万円ほどかかります。後見開始(効力が生じる時)にかかる申立費用が5,000円ほどで、合計で3~4万円ほど見ていれば安心です。被後見人が第三者(主に法律の専門家)の場合はこの費用とは別に月額3万円ほどが法定後見人の報酬としてかかってくので注意してくださいね。任意後見制度の場合は任意後見人に被後見人の親族がなる場合が多いので、その方の報酬も約束されていますので、平均月額報酬として25,000円ほどかかることを加味しておいてくださいね。

現状は任意後見人に被後見人の親族がなる場合、報酬を受け取らないことが多いです。というのも、親などの世話をするのは普通と考えている方が多いからです。ですが、「報酬を受け取る権利はある」ということだけは押さえておいてくださいね。なぜなら、「報酬付与不知」といって、そもそも報酬を受け取れることを知らなかったケースが多く、問題になることが多い為です。

任意後見人になった場合の報酬

任意後見人に法律の専門家などの第三者がなる場合、法定後見人が受け取れる報酬の額と変わりありません。特筆すべきは被後見人の親族が任意後見人になる場合で、結論から言ってしまうともらってももらわなくても大丈夫です。もらう場合は報酬の平均の80%ほどが相場と言われています。ゆえに月額25,000円くらいが妥当です。この辺りも家庭裁判所に申立をして審判を受けると額を教えてもらえるので正式な手続きを踏みたい方はそちらがオススメです。

ちなみに、任意後見人が親族の場合、「報酬をもらっていない」という方は全体の40%ほどいます。自分の親などの為に行うことが多いので、気にする人がいないというのも現実です。稀に被後見人の資産状況が良くない為に報酬を支払うことのできない場合もあります。

さらに、任意後見人が法律の専門家でない場合は「任意後見監督人」が付くことは前述した通りですが、この任意後見監督人にも報酬は発生します。相場としては月額1~2万円ほどです。これは任意後見監督人から報酬の支払い請求があった場合のみ、家庭裁判所が判断して被後見人の資産から支払われます。

終活ドクター
法定後見人・任意後見人にかかる費用や後見人になった場合の報酬について理解できましたでしょうか。後見人に払うべき金額はもっと高くつくと思っていた方が多いと思います。安いからといって手放しに喜んで良いわけではありません。「成年後見人に関する注意点」で詳しく述べていますので、「早く知りたい!」という方はこちら。次に、
「後見・保佐・補助の判断基準」について分かりやすく説明します。

後見・保佐・補助の判断基準とは

成年後見人制度についてはこの段階である程度分かってきたと思います。被後見人には判断能力に応じて3つのレベルに分けられています。それぞれできること、できないことがあるので確認しておきましょう。判断基準は家庭裁判所が精神鑑定の結果や申立書に基づいて通達するので明確な判断基準を提示することはできませんが、ある程度は判断できます。レベルとしては、判断能力が低い(症状が重い)順に「後見」「保佐」「補助」となります。

後見の基準

一般的な解釈は前述の通りです。基本的に後見は、判断能力がほとんどない状態=自分で判断ができない=日常生活の買い物等が全くできない状態です。被後見人を補助する方を「後見人」といって、後見人は被後見人の財産管理や法律行為を代理することができる「代理権」を得ます。さらに、日用品の購入や日常生活に関する行為以外を取り消すことができる権限である「取消権」も得ることができます。いわゆる「完全なる代理人」ですね。

ただし、代理権の中でも自宅の処分に関してだけは家庭裁判所の許可が必要になるので注意をしてくださいね。

保佐の基準

保佐は日常生活の買い物は1人でできるが、重要な買い物(不動産契約)などは理解に苦しむので誰かの支援がないと厳しい=判断能力が著しく不十分な状態です。被保佐人を補助する方を「保佐人」といって、保佐人は被保佐人が行う法律行為(不動産・相続・借金・訴訟等)について「同意権」「取消権」を得ます。上記の行為(不動産・相続・借金・訴訟等)を保佐人の同意なく被保佐人が行った場合、取り消すことができます。

保佐人の同意を必要とする法律行為(同意権)や代理権を別途追加することもできます。そのためには家庭裁判所にて審判の手続きを行う必要があります。

補助の基準

補助は日常生活の買い物は1人でできるが、重要な買い物(不動産契約)などで、1人で行えなくもないが、適切に法律行為を行えない可能性があるため、支援があると安心である=判断能力が不十分な状態です。被補助人を補助する方を「補助人」といって、補助人は被補助人が行う法律行為(不動産・相続・借金・訴訟等)の一部分について保佐人と同様に「同意権」「取消権」を得ます。保佐の基準と同様に、追加で同意権と代理権を得ることもできます。

後見人については「同意権」がありません。勘の鋭い方はお分かりかもしれませんが、後見人には被後見人の同意に関係なく日常行為以外の法律行為に対して「取消権」を行使することができるので、同意権は無くても問題ありません。保佐・補助に関しては「代理権」を家庭裁判所の審判により追加することができるとしましたが、前提として、被保佐人・被補助人の同意を得る必要があります。

終活ドクター
後見・保佐・補助に与えられている権限について理解できましたでしょうか。レベルによって権限が大きくなっているのが分かると思います。次に、その権限をどのような場面で行使するのかについて「成年後見人の仕事内容」について触れながら説明していきます。

成年後見人の仕事内容

一口に「財産管理」と言ってもピンとこない方もいると思いますので、成年後見人の仕事内容や仕事の期間などについて解説していきます。

成年後見人の仕事内容は、被後見人の財産状況を明らかにします。その方法は、預貯金・有価証券(株)・不動産・保険などの資産の内容を一覧にした「財産目録」を作成することによって、財産状況を明らかにできます。この財産目録を家庭裁判所に提出します。財産状況はこれで明らかになったので、次に、収入と支出の予測を立てます。これを「本人予算収支表」と言います。支出に関しては、支出ごとに使途を明らかにして、領収書をまとめておく必要があります。さらに、被後見人の預金通帳を管理・保管します。必要に応じて介護サービスの手続き等の契約を代理して行います。家庭裁判所、もしくは成年後見監督人から要請があった時に財産状況を提出する必要があります。

成年後見人の仕事の期間は、被後見人が死亡するか、症状が回復するまで継続します。成年後見人になるにあたって、「預貯金を管理する」「相続の手続きを行う」などの当初の目的が果たされたとしても続きます。被後見人の財産を後見人の私的利用等が明らかになった場合、後見人を解任され、場合によっては損害賠償責任を伴います。

参考:「名古屋家庭裁判所」

成年後見人がやってはいけないこと

・被後見人を借金の保証人とすること

・被後見人名義の不動産に抵当権(担保にすること)を設定すること

・リスクの大きい金融商品などを購入し、財産を投機的(計画的な投資ではなく、不確実性が高く、ハイリスクハイリターンなもの)に運用すること

・被後見人以外の方の為に財産を使用すること

参考:「名古屋家庭裁判所」

終活ドクター
成年後見人の仕事内容について理解できましたでしょうか。被後見人が死亡するまで続くので任意後見人はとっても辛いことが分かると思います。少しネガティブな情報にはなってしまいますが、成年後見制度を利用する際に注意すべきことを、
「成年後見人制度を利用したことによって大損を被ってしまったケース等」を基に詳しく説明していきます。

成年後見制度を利用する際の注意点

ここまで成年後見制度について色々と理解してきたと思います。その中で「任意後見制度にて被後見人の子である私が後見人を務めたいけど既に認知症の症状が出てしまっていて法定後見制度を利用するしかない」という方もいると思います。その場合、被後見人の親族が後見人を務めることは難しいです。頭の切れる方は「法定後見制度を利用して後見人の希望を親族にして申立をして法律の専門家達が後見人として通達されたら却下すればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、残念ながらそれはできません。申立をした時点でその申立書は棄却することができません。

また、成年後見人の期間満了は被後見人が死亡するか、症状が回復する場合のどちらかです。認知症や痴呆症の症状が回復することは考えにくいので実質永遠です。法定後見制度の場合、法定後見人である弁護士などの働きが良くなくて、変更したい場合もほとんど許可されません(犯罪行為などが目立つ場合にようやく変更ということがあります)。というのも、法律の専門家なので、家庭裁判所からもある程度の信頼を持たれているということです。

認知症により法定後見制度を利用した時の悲劇

もっとひどいケースを紹介しておきますと、既に認知症を発症している夫の妻が家庭の財産がほとんど全て夫名義になっているため、預貯金なども下ろすことができない状態になっていた家庭がありました。そのため妻は法定後見制度を利用しようと考えます。妻も高齢なので、自分1人では手続きを済ませるのが難しいと感じ、地元の弁護士に手続きの代行を依頼しました。通常法定後見制度の申立には1万円しかかからないのにも関わらず、手続き全て合計で20万円請求されたそうです。その時は仕方なく支払いました。後見人の希望としてその弁護士・妻を家庭裁判所に提出しました。ですが、家庭裁判所からの通知はその弁護士だけでした(これは法定後見制度の場合だとほとんど法律の専門家達に依頼されることが多いです)。

悲惨な出来事はまだ続きます。認知症を発症した夫の判定は、「後見」でした。これは理解できますね。その結果、弁護士が全てを牛耳ってしまったのです。夫の財産から不動産まで妻の許可ではなく弁護士の許可がなければ何もすることができません。生活費も夫の口座から下ろすこともできず、弁護士から少ない金額(生活費)を渡されて終わりだったそうです。後見人になることが決まってからというもの、前述した後見人の仕事の義務は果たしているものの、面会することは一切なかったそうです。この行動に対して疑問を感じた妻は家庭裁判所に不満を言いました。ですが、全く聞き入れてもらえず、「横領などの証拠等を見せてください」と言われたそうです。ですが、妻には通帳を見る権限すらないので現在どのような状況になっているのかすら分かりません。一度成年後見制度を申立してしまうと棄却できないのでこの状態は夫が死去するまで続いたそうです。

これはかなりひどいケースですが、実際にあった話です。このケースとしては、夫が認知症を発症する前に任意後見制度を利用しておく必要がありましたね。成年後見人は報酬を月に3~4万円ほどしか受け取りません。大体の弁護士・司法書士は成年後見人を兼任していることが多く、私達が理想としているような手厚いケアを受けられないことがほとんどです。
しかも、横領などの事実があっても家庭裁判所は動いてくれない場合もありますし、立派な犯罪なのにも関わらず、成年後見人を降任させられるくらいの処置で終わるそうです。

成年後見人はとっても美味しい仕事

このように搾取されてしまう方には同情しますが、ということは搾取する側はとっても美味しい仕事ということです。財政管理なんてものは法律の専門家達からすると朝飯前の作業です。しかも被後見人のケアは義務付けられていないので、面会する必要もないですし、いくつも兼任すればかなり大きな額のお金が入ってくることになります。これからもっと需要が大きくなってくると思いますので、比較的簡単に取得できる「社会福祉士」の資格を取ってみてはいかがでしょうか。オンラインで完結の資格スクールがあるので試してみるのも良いのではないでしょうか?今なら無料体験をできます。

終活ドクター
この知識も知っているだけで専門家から搾取されるリスクを最小限に抑えることができます。しっかりと理解して行動に移せるようにしましょう。
最後に今回の記事をまとめて終わりにしていきます

まとめ

今回紹介した成年後見制度について簡単に振り返っていきましょう。
成年後見制度には2種類あって、「法定後見制度」「任意後見制度」の2つでしたね。それぞれなるためにはどのような手続きを踏む必要があったのか、仕事内容・費用・報酬などについても理解できましたでしょうか。最後にショッキングなケースも紹介しましたが、今回述べた成年後見人に関する最低限の知識を知っているだけで大損するリスクを最小限に抑えることができます。

いかがでしたでしょうか。成年後見制度を利用しようと考えていた方は、「費用が安く済んで安心」と思った方もいると思いますが、被後見人が死亡するまで毎月支払い続けなければいけないので、長期的に見るとかなりの負担になってきます。どちらにしても知っているだけで得をするような情報ばかりだったと思います。法律・相続・年金は知らないと損をすることが多いので、これからの社会を生き抜くためにも、しっかりと学習しておく必要があります。